​祈り雲が大切にする三つのこと~その弐~

​日本のかたち

神社の彫刻にある伝統的な日本のかたち
祈り雲素材と職人の彫刻手仕事

 ところで、彫刻に限らず、近代以前の日本の彫刻や絵画に見られる川の流れや海の波、雲は、ほとんどが複数の線によって表現されますが、それらの線の流れにどこか生き物のような生命感を感じたことはないでしょうか?

 それは、古来の人々には、それらが命あるものとして捉えられていたからと考えます。


現在、私たちが使う"自然(しぜん)"の解釈は19世紀に西洋から流入した"nature"に由来します。当時、日本には西洋の言う"nature"に当たる単語がなかったため、一番近いと思われた"自然"の文字が当てられました。

 しかし、本来の自然(じねん)の概念は、自然と人は分別したものではなく、自分自身も命に溢れる自然に内包されているという概念でした。
そんな人を包括する途方もなく大きな自然を、畏敬の念を抱きながら見つめれば、波のしぶきや雲のうねりも、物理的現象というより、命あるものの一つの表情のように見えてきます。

 おそらく、人と自然が対象化されていなかった時代に生きた人々は、ごく当たり前に、そのような感覚で自然を見ていたのではないか。そう思えるほど、その表現は豊かです。

神社にみる伝統的な雲のかたち

 私たちが話す日本語は「いい天気ですね」「肌寒くなってきましたね」と、挨拶の中に、移ろいゆく天気や季節の変化を織り込みます。このことは、人の生活が自然の中にあるという日本固有の自然観というものが、今なお、私たちひとりひとりの中に息づいている事を表しているのではないでしょうか。


 祈り雲のコンセプトと造形が、この自然観をベースとし、生きた形を意識しているのは、日々の生活空間において、手を合わせ感謝する場所は、人の心が帰る場所でもあると考えるからです。

 私たちの心に昔からあるものを大切にした素朴なかたち。それが祈りの場に安らぎをもたらすものと考えました。

​ここまで読んで頂きありがとうございました。

​もっと祈り雲の制作について知りたい方は、下の記事も、合わせてご覧ください。

祈り雲が大切にする三つのこと

~その壱~​

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見えないところに​

こだわる

祈り雲が大切にする三つのこと

~その参~​

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​至高の良材を使う

 神社に行くと、いたるところに雲の彫刻を見つけることができます。

 立体的な彫刻であったり、筋状に彫りこまれた線が雲を意味していたり、古来から「雲」の彫刻は日本の文化の中でなくてはならないモチーフでした。
一見すると複雑に見える雲の彫刻も、その構成は主に渦巻と流れを表す曲線部だけです。職人たちは、このとてもシンプルな要素を構成し、多様な造形美を生み出してきました